私季-Glorious Season's Poetry-

【コンセプト】

GSPの活動はコンサート活動・CD制作に大きく二分されます。趣旨はGSPのトップにも書いてありますが、この活動を思い立ったきっかけは様々です。例えばThe Dynamitesでは出来ない事・取り上げない事で自分の出来る事をやってみたいとか、僕だけの力で表現出来る全てを出してみたいとか。そんな中仕事柄色々なアーティスト形態、音楽形態を目の当たりにします。勿論どれも素晴らしいものばかりですが、中にごく一部「えっ、これで良いの?」「これを聴衆に音楽として提供して良いの?」と思う事があります。自分も知らない間にそういう低俗なものに手を貸しているのかもしれません。僕が一番考えたのは自分の出来る精一杯を出して「良質なものを」作ろうという部分です。そう言う意味で自分に科したプレッシャーは相当なものでした。それはこのCD制作に関してもまずは曲作りの面から、そして録音当日の演奏まで・・・。精神的にも肉体的にもピークに達しましたが、それだけに録音終了後は大きな満足感に包まれました。そして共演者は勿論の事、今まで出会った中でも秀逸に能力の高いスタッフに囲まれ、そういった面でも現時点で最高の音をお届け出来ると自負しています。あとは自分では「良質?と思っているものが聴いてくれる人々に「良質」と受け止めてもらえるか、それがこれからの勝負です。その上で耳馴染みな曲を多く取り入れた事によって少しでも多く、そしてワールドワイドに聴いて頂けたら、そしてそのチャンスがあったら逃さずつかまなければと、更なるプレッシャーを自分にかけています。やっぱり音楽家は自分を出して、自分を聴いてもらわないとね!

【楽曲制作】

楽曲の選択は以外と簡単に進みました。大きな意味でのコンセプトとして「出来る事は全て」というものがあったので、それぞれのジャンルから有名な曲を引っ張り出し、あるいはやりたいという曲を選択するだけでした。オリジナルに関しても昔からあたためていたテーマがあったので、あとは完成させるだけ。しかしながらそんなに多くの回数をこなしていないピアノとヴァイオリンという編成、書いたとしてもガイドラインだけでコードネームに頼った譜面が多かったので、制作過程で時間もかかり、楽譜作成だけで多くのエネルギーを費やしました。今回はセルフプロデュースなので、オリジナル作品は勿論、アレンジ作品も全ての譜面をきっちり書きました。当然どの曲もアドリブ的要素が盛り込まれていますが、GSPでお願いしているピアニストは基本的にコードネームを見て弾く事はしません。なのでアドリブセクションも全て僕が一音一音丹念に書いています。だから編成は二人だけで二パートしかないものの、書いた音数は相当なものでした。しかしながらそれ故に譜面を書く面白さが沢山あり、アドリブセクションに関しても、後でいかにもセッションをしているような感じで演奏出来るようにアレンジをし、演奏時もピアノパートの変化に僕のアドリブパートの変化を合わせていく、そういう遊び心満載の演奏が出来ました。やってみて今更ながら思ったのは、今回の二人のピアニストは共に読譜力・テクニック・音楽性に素晴らしいものがあり、書いたとおりに弾いてくれるのは勿論、そこから譜面に無いものを読みとり、素晴らしい感性を僕に与えてくれました。慣れていないポピュラー的な要素も「こういう感じで・・・」と一言アドバイスするとものの見事に表現。共演者に恵まれたと心から感謝しています。

【収録楽曲(全11曲)】

CDの楽曲解説とは違った、GOTSU.NETならではの楽曲紹介を曲順通りに掲載します。

「前奏曲とアレグロ〜プニャーニのスタイルによる〜」(クライスラー)
ディレクターのリクエストにより選曲した知る人ぞ知る名曲。僕の譜面には母親の小学校時代の発表会の日付、懐かしい・・・。この曲も譜面を大きく変えていませんが、僕ならではのフェイク(どこをどうフェイクするんだ!)と若気の至りで引き倒していた昔とは違う、経験から来るゆったりとした解釈をお楽しみに!
「波」(アントニオ・カルロス・ジョビン)
このコーナーでは分かりやすいように全てのタイトルを日本語で書いていますが、そのために分かりにくくなった唯一の曲。そうです、言わずと知れたジョビンの名作「WAVE」。この曲は何度もアレンジを依頼された事があるのですが、その昔あるアーティストの為にアレンジをした時に「この曲聴いた事がないんですよお」と言われ(それでも音楽家か?ラジオでもテレビでも町中でも、耳があればどこかで聴いているだろう!それでも知らないのなら聴いて勉強しなさい)と言おうと思ったが勇気が無くて言えず、結果聴いてみたら僕のアレンジは台無し、あまりの演奏に愕然。その譜面があまりにかわいそうなのでGSP用に大幅リニューアルして復活させました。
「チャルダッシュ」(モンティ)
やっぱり・・・と思った方は僕の事をよくご存知!僕にとってはすっかりお馴染みの曲。小学生の頃の発表会、親父と行った東南アジアへの演奏旅行、卒業してからはオーケストラ・弦楽合奏・ピアノを始めとしてカルテットやThe Dynamitesでも演奏した事があり、今までの人生で何回弾いたか覚えていない。GSPならではのアレンジは聴いてのお楽しみに・・・。
『私季』(後藤勇一郎)
「春〜麗らかな日々〜(Spring〜glorious days〜)」
「夏〜うだるような〜(Summer〜sweltering…〜)」
「秋〜枯葉舞う頃〜(Autumn〜falling leaves〜)」
「冬〜凍てつく大地〜(Winter〜freeze the ground〜)」
今回、オリジナル作品を作るにあたり、一つの大きなテーマを元に作曲する事にしました。そのテーマとは、日本でもっとも美しく感じられるものである「四季」です。ヴァイオリンの作品にはお馴染みのヴィヴァルディ作曲による「四季」があります。昔弦楽合奏団に所属していた時は何十回と演奏していて、そんな思い入れからいつか自作の「四季」を書いてみたいと思い、つけたタイトルが「私季」。ヴィヴァルディ作曲による「四季」には季節感をうたったソネット(詩)がついていますが、この「私季」にも「ポエトリー(Poetry)」と称して、思い描く情景を曲に添えてみました。ポエトリーはCDのブックレットに掲載するので、是非その詩と共に聴いて下さい。楽曲のスタイルに関しては僕が出来る全てを表現しました。アカデミックな作風あり、ジャズやラテン、歌謡曲等のポップな作風あり、それをヴァイオリンとピアノだけという枠の中で精一杯表現しました。全4曲を通して演奏するとおよそ30分近い大曲です。僕だけではなく他の人にも弾いて欲しいとも思える(僕はケチだから僕がこの世に存在しなくなったらOK!)自分でも自信を持ってお届け出来る秀作だと思っています。乞うご期待!
「メロディ〜なつかしい土地の思い出より〜」(チャイコフスキー)
ある人からのリクエストにより選曲した知る人ぞ知る名曲、と言いながら僕は数回しか弾いていません。記憶に残っているのは、10年程前にかの有名な作曲家兼ピアニスト羽田健太郎氏と一緒に弾かせていただいたのが最後。譜面を大きく変えていませんが、僕ならではのフェイクを(フェイクしていいのか!)お楽しみに!
「愛の悲しみ」(クライスラー)
この曲もチャルダッシュ同様、オリジナルのピアノ伴奏のみならずカルテットやThe Dynamitesでも取り上げています。愛の悲しみならぬ「愛の苦しみ」ぐらいヘビーでクールなアレンジに仕立ててあります。
「ブエノスアイレスの冬」(アストール・ピアソラ)
バンドネオンの名手であり作曲家でもあるピアソラの楽曲はどれも素晴らしい。僕が特に好きなのはこの曲。この曲をアレンジする前に色々と譜面を取り寄せて、中にヴァイオリンとピアノという編成の譜面があったのですが、それがあまりにもちゃちなため、自分でアレンジをする事を決意。多くの要素を取り入れたらヴァイオリンにとってもピアノにとってもかなりの難曲になってしまいました。二人の奮闘ぶりをお楽しみに!
「枯葉」(ジョセフ・コスマ)
誰もがよくご存知の、イブモンタンが唄ってヒットしたシャンソンの名曲であり、ジャズの分野でもとても多く取り上げられている曲です。これを僕はなんと無伴奏ヴァイオリンソロにアレンジをしました。無伴奏ヴァイオリンと言えばお馴染みのスタイルあり、ジャズテイストもありのスタイルに仕上げています。演奏も今回のホールにマッチした豊かな響きに仕上がっているはずです。

以上が今回の作品です。自分が演奏出来るスタイルを幅広く取って選曲しました。編曲の手法など詳しい作風はCDの楽曲解説をお楽しみに!